学び、飛躍の学徒を支える
久敬社ここにあり
久敬社塾監就任後、塾棟内を歩くと瞬時に若かりし頃にタイムスリップできる反面、大きく変貌した現実との違いに、「あの頃の久敬社は何処に」と挨拶してから、2年の歳月が過ぎました。
当初、「あの頃の久敬社は・・・」などと柄にもなく弱音を吐いた数ヶ月もありましたが、夏休み明け9月、11月の理事会に於いて、塾舎改修方針、方法等の具体的内容が決まり、いよいよ140有余年の歴史ある男子学生寮久敬社塾にはじめて女子学生を迎え入れるための様々な準備が進み始めると、久敬社塾における「歴史的大転換からくる不安」は、「大きく飛躍していく期待」へと変わっていきました。
先ずは、物理的な環境整備・準備です。
正面玄関及び3階入口に指紋認証方式の電磁錠の設置、301号室に二箇所のユニットバスルーム及び洗面所の設置(給湯式洗面台)、3階トイレ改修では、小便器撤去にともなう洗濯スペースの設置(2台の洗濯機と温風乾燥機)等が進んでいきました。
目に飛び込んでくる劇的ビフォーアフターは、不安を吹き飛ばし、大きな期待へと変わっていきました。
正面玄関と3階入口に取り付けられた指紋認証方式の電磁錠に指を翳しドアが開くと、セキュリティーという安心感は勿論のこと、自分の居場所も実感できるのだと感心しました。
これまで、よほどでなければ自分の部屋に鍵をかける生活経験のなかった塾生には大きな転換につながったと思います。
次に、女子学生受け入れにともなう久敬社塾規程の見直しです。
久敬社塾規程を具体的にどのように改正・改訂するのか、とりわけ塾規程の根拠となる考え方や在り方をどうするのかという内容が中心でした。
しかも、この内容に関する準備(話合い)については、在塾生8名という少数精鋭の塾生達ではありましたが、久敬社創設以来大切にしてきた「学ぶ学徒、飛躍の学徒を支援する久敬社」、「自主自律を重視してきた久敬社塾生の自治」を拠り所にした話合いを重ねながら、『久敬社塾の精神』を再確認してきました。
ただ、『久敬社塾歌をどのようにするか』については、実際、女子学生を受け入れ、新しい久敬社塾生の話合いを通す中で協議・確認していくという懸案事項としました。
そして迎えた令和3年度、2年ぶりの久敬社入塾式が行われました。
新入塾生10名(女子学生4名、男子学生6名)という構成で、在塾生4名を合わせ総塾生14名でのスタートでした。
140有余年の歴史ある男子学生寮久敬社塾に女子学生を受け入れることをニュースにと、NHK佐賀放送局、テレビ朝日、佐賀新聞の報道取材を受けながら歴史の1ページを祝ってもらいました。
それから早1年、新入塾生10名を交えた、和気藹々、これまでの男子学生寮では思いもよらなかった新しい風、雰囲気が生まれてきました。まさに、新たなコミュニティーでの学生自治が繰り広げられてきた一年でした。
そして令和4年度、新たに女子学生10名、男子学生8名を迎入れ、パワーアップした久敬社塾生活がスタートしています。
明治4年、唐津藩の『耐恒寮』にルーツをもつ『久敬社塾』においても、「若者の育成は先ず学問にあり、先端の知識を学ぶ者を性差に関係なく受け入れ、大きな目標に向け学び・羽ばたく学び手を支援していく」という久敬社の使命を伝え、久敬社塾生一丸となって、大きな未来に向けて突き進んでいます。

公益財団法人久敬社 理事・塾監
山﨑 信也