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2022年02月24日

流浪の俳人”山頭火” の旅また旅の唐津旅…。3月献立表です

流浪の俳人”山頭火” の旅また旅の唐津旅…。3月献立表です

はじまりは明治11年

春陽堂書店は、久敬社が東京市麹町区番町で産声を上げたのと同じ明治11年に創業され、幸田露伴や芥川龍之介らを編集主幹とした文芸雑誌「新小説」を刊行し、泉鏡花「高野聖」や国木田独歩「帰去来」、夏目漱石「草枕」、田山花袋「蒲団」など数多の名作を世に出しました。昭和47年刊行の「定本山頭火全集」は当時無名の俳人だった種田山頭火(明治15年-昭和15年)を発掘し、今日に至るブームの火付け役となりました。

創業140年を迎えた平成30年には、種田山頭火賞を創設。これは俳句の賞ではなく、「山頭火のごとき信念を貫いた傍若無人的人物、流浪するアーティスト、放埒と自由を謳歌する人を顕彰」する異色の賞です。賞創設と同時に刷新された珠玉のWEBメディアと並んで、同社の真摯かつ型破りで先鋭的な姿勢を象徴しています。

山頭火は、生涯で8万を超える句を詠んでいます。次の10句は色紙や版画などでよく見かける代表作です。

  • うしろ姿のしぐれてゆくか
  • 分け入つても分け入つても青い山
  • 酔うてこほろぎと寝ていたよ
  • まつすぐな道でさびしい
  • あるがまま雑草として芽をふく
  • この旅、果てもない旅のつくつくぼうし
  • また一枚脱ぎ捨てる旅から旅
  • 木の芽草の芽あるき続ける
  • 濁れる水の流れつつ澄む
  • 窓あけて窓いっぱいの春

山頭火の唐津旅と句碑

唐津には昭和7年の1月と4月に訪れています。浜崎から虹の松原を巡り、中心部を通って佐志、唐房、相賀、湊、呼子、加部島、名護屋へ。そして相知から武雄、嬉野に向かっています。”行乞記”は、道中の句作を交えた旅日記で、その中から市内には4つの句碑が建てられています。うち1つは、教育・郷土史家だった北波多村出身の故山崎猛夫氏(昭和53年卒久敬社OBの父君)が発起人になって建立されました。

1.松に腰かけて松を観る
(唐津市 虹の松原 二軒茶屋前)

豊臣秀吉が名護屋に行く道中、松が高くて邪魔なので「頭が高い!」とにらみを効かせて以来、背の高くならない「にらみ松」が生まれたとの伝説があります。日記には「松原の茶屋はいいね、薬罐からは湯気がふいている、娘さんは裁縫をしている、松風、波音。………」と添えられています。湯気がふく音、松風の音、波の音しか聞こえない静けさの中で、砂地を這う太い幹に腰を下ろし、松林を眺めたのでしょうか。
句碑はからつバーガーから博多寄り、二軒茶屋(現在土産物店)の前に建っています。

2.空へ山へ摩訶般若波羅密多心経
(唐津市西寺町 近松寺境内)

近松寺は久敬社を創設した旧唐津藩主小笠原家の菩提寺で、庭園は曽呂利新左衛門の作。「こぢんまりした気持ちのよいお庭だった」と書いています。句碑は本殿の左手にあり、日本のシェイクスピア近松門左衛門の墓もすぐそばに。日記には、唐津名代の松露饅頭も登場しますが、「うまそうだ、しかし名物にうまいものなし」とこれは食さず、小鰯を買って一杯の酒を呑み佐志へ足を向けました。

3.風の中声はりあげて南無観世音菩薩
(唐津市佐志南 光孝寺境内 )

佐志南の国道202号線(唐津バイパス)沿いに光孝寺という寺があり、参道の坂道を上ると左手に観音像、その前にこの句碑が建っています。冬枯れの冷たい風景の中、北からの強い海風に押されて歩いていると、思わず「南無観世音……!」と叫びたくなる様子を詠んだ名句で、この句碑は全国数か所にあります。そして、次のように記しています。
「女は、農漁村の女はよく稼ぐ、と今朝はしみじみ思った。朝早く道で出逢ふ女人の群、それはみんな野菜、薪、花、干魚を荷った中年の女達だ。松浦潟-そのよさが今日初めて解った。七ツ釜、立神岩などの奇勝もあるそうだが、そんなことはどうでもよい。山路では段々畠がよかった、海岸は波がよかった、岩がよかった。相賀松原もよかった」。

4.徳須恵といふ地名は意味がありそうだ、麦が伸びて雲雀が唄ってゐる、もう春だ
(唐津市北波多村徳須恵 岸岳ふるさと館駐車場)

字数や季題にとらわれない、とりわけ奔放自在な山頭火らしい自由律の句です。「徳須恵という地名には意味がありそうだが、相知(おうち)という名前もおもしろい」と、訪れた春の光の中で明るく弾んでいます。
前述の通り、久敬社OBの父上殿の声掛けにより句碑は建立されました。「わが里の村勢発展を祈念し、この文学碑建立を発起した次第です。揮毫は野中輝和尚にお願いしました。 山崎猛夫 記 」と付されています。文化(財)は葬ったり、放逸、散逸させてはなりません。ありがたいことです。

鏡山は眺めるだけで、「ふりかへる領巾振山はしぐれてゐる」という句を残して、山頭火は唐津を離れて行きました。

さて、肝心の2022年3月献立表はこちらです。スペシャルメニューは29日(火)の夕食、「トルコライス、温玉のせシーザーサラダ、スープ、デザート」です。霞む山に鳥が啼き、花粉も蝶も舞い始めました。感染症は無論のこと体調不良に注意しましょう。

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